例会

10月337回例会のご案内

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※ 前後半共々会場対面の予定です。リモート配信はあります。会場は氷川区民会館
です
※ 会場でご参加の方は、参加者名簿にご記入の上、整理費500円也をお納めください。

◉テーマ 校本・新校本における今日的意義 ―知って置くべき校本・新校本の作法―
口上〈序〉
 賢治生誕百年の一九九六年から二九年が経過しました(!)。と言うことは「新校本宮澤賢治全集」も刊行から来年で三十年になるわけです。先代の(旧)校本全集はシミも現れ、拙宅の蔵書の中でもかなりの古本になりました。全集と言う刊行形態は、作家の創作の現場に読者が肉薄出来る事を目指したものと理解しますが、一方で作家の小宇宙に対する読者の所有欲を満たす意味もあったと思います。これからさらに全集が更新され続けるのかと考えると、少なくとも今までの延長では進まないでしょう。ただ、これら半世紀に及ぶ時間の経過は受容史として新しい視点を得るに十分な長さでしょう。校本・新校本への認識について改めて今日的な吟味作業をしてみようと考えました。
 この様な考え方に至るには、当会の「読書会」活動に大きな意味があると考えます。直近では「短歌百選」をまとめることが出来ましたし、校本に対する「リテラシー」も個人を超えて組織としての会がそれなりに獲得して来た実感があります。とはいえ、あまり良く理解しないままになっている部分も少なくないでしょう。校本から始まって経過した半世紀の時間は、全集編集作業が「物語」に変わる時間でもあります。(宮沢清六氏プロデュースの「〈文学史に燦然と輝く〉校本時代」半世紀の次に控える時代の理想も考える必要があるでしょう。)
 回答者に新校本の編集者であった栗原敦、杉浦静の両氏をお迎えし、いくつか用意したエピソード(意味としては「章」程度です)を枠組みに据え、ホームページ経由で事前に募集した質問を中心に、質疑応答で全体を構成しようと考えています。知っているようで実は知らない校本、新校本の秘密に「改めて」迫ろうと言うものです。
 前半
◉エピソード1 物語「花巻スタンドバーの夜」
・「討議『銀河鉄道の夜』とは何か」(元来はユリイカ)をきっかけに、宮沢清六氏から依頼を受けて作業に入るまでの経過が物語として語られているもののおさらい。
◉エピソード2 校異の読み下しは可能か
・我々は読書会で、当然の様に校異を読み下しています(それは、漢文にレ点を付けて読む方法に似ますが、そのことはどう評価できるのでしょう)。しかし、そもそも校異は読み下しを想定して作られたものではありません。けれども読み下し無しに読書会は成立しません。理想的な読み下し方法はあるのでしょうか?
◉エピソード3 「凡例」「校異凡例」精読(テキストとして再読。主筆はどなた?)
・たとえば、新校本時の「凡例」や「校異凡例」が決まる時の経緯など、知る事が出来れば。
 後半
◉エピソード4 「本文校訂」のロジックの理解及び各全集により異なる編集方針
・全集間の差異 校本以降でも、新修版、文庫版、新校本、コレクションとそれぞれの編集方針が説明されています。
◉エピソード5 あらためて……「永久の未完成これ完成なり」と言うのはどう言うことか?
・あるいは、「推敲の現状を以てその時々の定稿となす」と言うのは、何にどの様な価値があるのでしょうか。
◉エピソード6 賢治は何処から来て何処へ行くか
・過去を振り返れば歴史ですが、将来へは展望を持つ必要があるでしょう。
・翻訳とIntelligence 電子化、データ化を経て現在はAIがとりざたされています。AIはArtificial Intelligence であり、差し当たって人工知能と訳されます。今後電子化、データ化の先は否応なしにAI等との関係性が取り沙汰されるでしょう。また、世界に「受容」されるには翻訳も必要です。次の二十年、またその先の二十年の展望は描けるのでしょうか。
 
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8月336回例会のご案内

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前半 演題と発表者 演題 「気のいい火山弾」を読む 村上英一(むらかみ・えいいち)氏
 「気のいい火山弾」は、「よだかの星」や「猫の事務所」に通じるいじめを扱った作品、或いは「虔十公園林」に通じるデクノボー礼賛の作品とする読み方をされることも多いが、一方で、ベゴ石が実は相当に賢いことも指摘されている。実際、やり取りを見ると、悪口に対して巧みに受け流しており、語り手も、「稜のある石ども」が「たゞからかったつもりだっただけ」だと述べている。
 ベゴ石が火山弾の標本としての価値を認められ、「東京帝国大学校地質学教室」へ送られるラストは、価値観の逆転やベゴ石の立身出世と捉えられることも多いが、ベゴ石自身は、「私の行くところは、こゝのやうに明るい楽しいところではありません。」と述べ、必ずしも喜んでいないどころか、むしろ寂しげでさえあることが問題とされている。ベゴ石は、馬鹿にされながらも野原にいて幸せだったと思われるが、そこをあまり重くみると、野原から連れ出される作品の結末は、悲劇となってしまう。「私共は、みんな、自分でできることをしなければなりません。」というベゴ石の言葉をどのように解したらよいのか、この作品を改めて検討してみたい。
(本会会長)
※会場における対面による発表+リモート配信。

後半 演題と発表者 演題 イーハトーブにおけるキツネの諸相 ―『宮沢賢治の動物誌』より― 神田彩絵(かんだ・さえ)氏
 本発表では、2025年2月に刊行した『宮沢賢治の動物誌 ―キャラクターを織り上げる―』より、イーハトーブ童話におけるキツネの諸相を取り上げて考察する。
 本書では、宮沢賢治が創作した一連の童話群を、イーハトーブという共通の“異世界”の中で展開される地続きのテクストとして捉え、繰り返し登場する8種の動物を「キーアニマル」と位置づけて分析を行った。分析にあたっては、生物学や民俗学、日本および世界の古典文学から近現代文学までを幅広く参照し、イーハトーブにおける動物表象と比較することで、宮沢賢治の動物観の独自性を明らかにしている。
 本発表では、その中からキツネに焦点を当てる。キツネは古来より日本人に親しまれ、神聖視されてきた動物であり、昔話から現代のコンテンツに至るまで、頻繁にキャラクターとして登場している。本発表では、イーハトーブにおけるキツネの表象を、日本における古代から現代までのキツネ観を中心に、生物学的知見や世界各地のキツネ観と比較することで、宮沢賢治のキツネ観の独自性とその文学的意義を浮き彫りにすることを目的とする。
(東京女子大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了。専攻は日本近現代文学。論文に「宮沢賢治童話における〈クマ〉――他者として描くこと」(「東京女子大学日本文学」第118号)など。渋谷区立宮下公園で開催されたWedding Park 2100「Parkになろう」(2023年)でエッセー「豊かさは繋がること」を寄稿。
著書に、『宮沢賢治の動物誌 -キャラクターを織り上げる-』(青弓社・2025年2月)。)
※ 会場における対面による発表+リモート配信。
 
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6月335回例会のご案内

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前半 演題と発表者 演題 『賢治の短歌や詩から浮かぶ新たなる風景』 栗原文子(くりはら・あやこ)氏
 とびきり意外で、響きの美しい語句が散りばめられている賢治の短歌や詩には、何回読んでも、新たな発見がある。詠まれてからあと少しで百年が経つというのに、その語句を見て知ったが最後、よく意味がわからなくても、金輪際忘れることができなくなったりするのであるから、全く天才賢治は人騒がせである。
 先ごろ、地質学者の高橋雅紀氏より、賢治作品に登場するあちこちの地質や岩礁について、興味深い知見を教えていただく機会を得て、筆者は目下、“先生の眼はヨハネのごとし”、“ボルドウ液の霧ふりて”、“粋なもやうの博多帯”、“ミンナニデクノボート ヨバレ”などに夢中である。
 早速、その知見をヒントに耳目をフルに働かせ、これらの語句から立ち上がってくる賢治でこその風景を想い描いてみたい。
(本会会員)
※会場における対面による発表+リモート配信。

後半 演題と発表者 演題 「春と修羅・第二集」下二推敲における表現手法の諸相 水野達朗(みずの・たつろう)氏
 「春と修羅・第二集」は「賢治の亡くなる昭和八年まで」の推敲の累積だが、作中期間である「大正十三年、十四年」の枠にとらわれ、教師から農民への「過渡的なものと見なされる傾向」があると入沢康夫は述べた(全集解説)。「第二集」が過渡期の記録として読まれるのを可能にした詩句(例えば杉浦静が指摘した「農事」をめぐる記載)には推敲終盤(昭和五年以降か)で追加されたものが多い。
 すぐ削除されたものも含めてこの段階で出現する詩句では、農学校教師としての農村との関係や、農村を苦しめた旱害に対する意識を踏まえて新たな道に踏み出すという主題が浮上する。またこうした「現実的」な内容の流入に対して、推敲初期からの「異空間」の構想や、比喩的な世界認識の手法を改めて構築し直すという方向性も現れてくる。
 本発表では、初期の表現様式を検討した拙稿「「春と修羅・第二集」下一初形における表現手法とその変容―「二重の風景」の詩学―」(『宮沢賢治研究annual』三四号)を承け、「第二集」の世界を貫く「二重の風景」がこうして初期段階とは別の形で再構成されていく様相を跡付ける。
(本会会員・大学非常勤講師)
※ 会場における対面による発表+リモート配信。
 
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4月334回例会のご案内

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前半 演題と発表者 演題 宮澤賢治の言語戦略―フィナーレ 大塚常樹(おおつか・つねき)氏
 私は2010年から、賢治が自身の思想を読者に効果的に伝えるために、言葉がもつ様々な要素や効果をどのように駆使したのかを「言語戦略」という名で研究テーマとし、その見取り図を本研究会で発表してきた。これまでに、賢治が法華信仰、妙見信仰と法華経の象徴としての白い蓮を別の白い花に置き換えるなど表面に出ないようにしてきたこと、語りの方法として枠物語や、逸脱する語り手、信頼出来ない語り手などをうまく使い分けたこと、オノマトペでD音等の濁音の、大きいものから出る低音という音象徴を効果的に使っていること、「~のもの」という種と類の関係を利用した提喩を使って同じ性質をもつ個別例同士の関係へ想像力を喚起させていること、幻想的な話や虚構とリアルな現実との境界を巧みに設定して、読者にリアリティを感じさせる工夫をしていること、これらを論文化した。言語戦略として最後に残されているのは、賢治が物語の最後にどのような決着を付けているかである。賢治テクストは、既成の価値観を異化、あるいは反転させることで世界のあり方を根本から変える戦略を基底に持っている。それには物語の最後にどのような反転、どのようなメッセージを読者に伝えるのかが重要である。論者は詩人として活動をしているが、詩の良し悪しは最後のフレーズで決まると考えている。言語戦略は対読者戦略でもあり、本テーマ追究のフィナーレとして、賢治テクストの「終え方」の戦略を考えてみたい。
(詩人〈日本現代詩人会会員〉、お茶の水女子大学名誉教授)
※会場における対面による発表+リモート配信。

後半 演題と発表者 演題 『銀河の図書室』の作者・名取佐和子(なとり・さわこ)さんにインタビュー
 4月例会の後半では、宮沢賢治の作品をモチーフに現代の高校生活を描いた『銀河の図書室』の作者・名取佐和子さんにインタビューを行います。
 名取佐和子さんは、ゲームシナリオライターを経て小説家に転身。兵庫県神戸市に生まれ、神奈川県藤沢市に育ち、2015年に『ペンギン鉄道なくしもの係』でエキナカ書店大賞受賞。2024年8月刊行の『銀河の図書室』では、「宮沢賢治」を研究する高校生の「イーハトー部」の活動を描き、話題を集めています。
 名取さんの作品には、『金曜日の本屋さん』(2018年2月)で「銀河鉄道の夜」が取り上げられ、『銀河の図書室』では「銀河鉄道の夜」と「ほんとうの幸」が物語の鍵となっています。また、読書や図書室の重要性も作品を通じて繰り返し描かれます。今回のインタビューでは、名取さんが宮沢賢治作品とどのように出会ったのか、『銀河の図書室』の創作と宮沢賢治作品とのかかわり、『銀河の図書室』へ込めた想い、そして図書室の役割やこれからの読書に関してお話を伺いたいと思います。
 インタビュー 大島丈志 文教大学教授
※ 会場における対面による発表+リモート配信。
 
※ 今回のインタビューにおいては必然的に「課題図書」的な扱いとなりますので、可能な限り事前の読了をお願いします。入手先の一例を示しておきます。
※ リリース案内文

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2月333回例会のご案内

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前半 演題と発表者 演題 「18歳の法華経との出会い、そして3つの物語」 大角 修(おおかど・おさむ)氏
 賢治は18歳の大正3年(1914)9月に「島地大等編『漢和対照 妙法蓮華経』を読み、からだがふるえるほど感動したという。
 それはどういうことだったのかを生家の宗旨(真宗大谷派)と島地の法華経から考えてみます。
 その後、賢治は詩や童話に法華経を秘かに沈め置いています。その例として「フランドン農学校の豚」「なめとこ山の熊」「銀河鉄道の夜」のラストシーンを取り上げます。それは賢治の作品に見られるパターンのひとつであり、娑婆即寂光の物語であると思われます。
(研究会役員)
※会場における対面による発表+リモート配信。

後半 演題と発表者 演題 民俗学者としての宮沢賢治 岡村民夫(おかむら・たみお)氏
 宮沢賢治の民俗学者的側面について紹介・考察します。『宮沢賢治論 心象の大地へ』(2020年)、「宮沢賢治と遠野物語的世界」(『現代思想』総特集・遠野物語を読む、2022年6月)、「『竜と詩人』小論 詩から「設計」への転回を海蝕洞窟に見る」(『賢治学』2020年6月)に書いたこととかなり重複しますが、フィールドワークという次元でまとめたいと思います。また、紙媒体では制約した映像資料や宮沢本家文書を呈示します。具体的には、ザシキワラシ、巨人、竜神、雷神、修験道といった事項や、海、川、野、山といった環境が話題となる予定です。
法政大学教授(表象文化論、場所論)
※会場における対面による発表+リモート配信。
 

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